June 21, 2004

『ここからはじまる倫理』

 アンソニー・ウエストン『ここからはじまる倫理』(春秋社、2004年)を読了。さまざまな倫理学説の解説というものではなくて、倫理について論ずるときの心構えを諭す書である。安直な自己弁護をするな、権威に頼らず自分で考えよ、創造的であれ、単純な二極化をするな、想像力を駆使せよ。筆者のこれらの主張は、つまるところ、「よく考えよ」ということだ。
 訳者の一人である野矢茂樹が語っているように、ときに楽観的に過ぎると思われる箇所もある。だがそれでも読者は考えさせられるだろう。アランが言うように、「悲観主義は気分、楽観主義は意志」だからだろうか。言うまでもなく、強い意志に抵抗できるものはない。
 ウエストンの主張(いや、態度と言った方がよいか)に賛同するにせよしないにせよ、この書は倫理について学ぶことがどのような意義を持つかを明快に示している。「倫理について学びたまえ、そうすれば人生を豊かにすることができる」。

投稿者 Vapor Trail : 11:12 PM