January 15, 2004

大学における研究と教育

大学における研究の特質とは何か。それは・・・教育の問題、すなわち、大学が学生と教師の共同体であるという性質につながる問題である。学生を教えることは、直接的には研究者にとって大きな負担である。・・・しかしまた真の研究者は、学生の素朴な質問の中に、単なる未熟さや幼稚さを見るのではなく、自分が没頭している高度な研究、深遠な問題設定に対する、根源的な——すなわち言葉の本来の意味でのラディカルな——問い直しを見いだすのである。・・・真の研究者は、学生から問われるだけでなく常に自ら問い直している人であるに違いない。
 これは建築家で、大学教授であった方の本からの引用である。  根源から問うことの必要性は、時代が混迷の度を増している現在、ますます高まっているのに、混迷を増しているがゆえに、根源から問うことの有益性がますます意識されなくなっているようだ。それは根源から問うことには時間がかかるからである。だが、速成のものは早く滅びる。それゆえ結果を性急に求めることは、そのための投資や努力を、結局、無駄に終わらせるだけであろう。

cf. 香山壽夫『建築家の仕事とはどういうものか』(王国社、1999年)、pp. 82-3.

投稿者 Vapor Trail : January 15, 2004 11:28 PM