December 18, 2003

ウンベルト・エーコ『永遠のファシズム』

 ウンベルト・エーコ(和田忠彦訳)『永遠のファシズム』(岩波書店、1998年)を読了。訳者の解説によれば、エーコが「モラル」について論ずるのは珍しいことらしい。だから、普段のエーコの著作と同じく、軽く楽しむのが求められている、というところもありそうだ。
 だがなかなかどうして、この本は言わば力が入っているように感じられる。もちろん、ところどころでニヤリとさせてくれる。だが真剣である。遊びに満ちた真剣さ、これは極めて良質の議論である。
 「新聞について」と題されたエッセイの最後の文句、「もっと世界をよく見てほしい、鏡を眺めることは控えてほしい」(p. 114)という言葉は、イタリアのマスコミと政界に向けられたものであるが、日本のそれらにも全く当てはまるものであろう。一般紙においてさえ、スポーツ記事が一面に載るような、はなはだしい内向き。これを克服しないで「国際化」を叫ぶのはほとんど漫画である。

投稿者 Vapor Trail : December 18, 2003 11:32 PM