October 27, 2003

学問

 阿部謹也『学問と「世間」』(岩波新書、2001年)を読了。
 新書というのはそもそも文庫よりも鮮度の落ちるのが早いものとして出版されたが、ここのところの雑誌的書物の隆盛とともに新書もその内容が先端ばかりを追いかけるのが増えた。この本で語られている大学改革の話はすでに決着済みである。また学問の生活からの、筆者の言葉を使えば「国民からの」遊離という話題も、何度となく言われてきたことであろう。
 フンボルトの大学の理念は教養中心であるが、それは若者のものではない(cf. p. 34)。これは重要な視点であろう。社会の中でしかるべき地位を占める人びとのもつ教養こそ、その国の在りようを決めるからである。生涯教育という言葉にまとわりつく「老後の余技」のようなニュアンスを払拭し、学問のプロの下で学ぶ人々を増やすこと。これが大事なのではないか。

投稿者 Vapor Trail : October 27, 2003 10:01 PM