October 08, 2003

政治哲学の一書

 ジョルジョ・アガンベン(高桑和巳訳)『ホモ・サケル——主権権力と剥き出しの生』(以文社、2003年)を購入し、「序」を読む。まだ全部を読んではいないので的確な判断は出来ないのだが、アリストテレスの『政治学』を基盤に、フーコーを批判的に継承しつつ、論を展開しようとしているようである。ハナ・アーレント、カール・シュミット、レオ・シュトラウスらへの言及もあり、読むのに骨が折れそうだが、しかし興味深そうな書である。
 折しも日本は「政治の季節」のようである。言葉遣いは大仰だが、何のことはない、単に衆議院の解散と総選挙が近いというだけのことだが、政策論争どころか、権力闘争や有権者の投票行動を「分析」した政治現象が紙面を飾るのに、耳をそばだてつつも背を向ける必要があろう。

 現象はもちろん「分析」するほどのものではない。現れているのだから。その背後にあるものを理解してこそ、現象もまた理解される。そのために必要なのは分析ではなくて、解釈である。

投稿者 Vapor Trail : October 8, 2003 11:07 PM