October 06, 2003

誤字

 この間、テレビを見ていたら、「急がしい」という文字が現れ、呆れた。近ごろはパソコンでテロップを作成しているのだろうが、考えられない間違いである。誤変換に決まっている。そう思って、自分のパソコンでisogashiiと打ってみたら、「忙しい」の他には、平仮名と片仮名の変換候補しか現れなかった。ということはテレビの誤りは、相当古いソフトによるのか。まさか「忙しい」と正しく変換されたのに、「急がしい」と改悪したのではあるまい。
 手書きではありえないような間違いが氾濫するのは、ローマ字変換のせいなのだろうか。それともローマ字ではなくて変換が問題なのだろうか。いずれにしろ、コンピュータで日本語を「打つ」ことから来る現象であることは否めない。いったいなぜだろう。

 思考のスピードとほぼ同じ早さで画面に平仮名が現れる時、その画面を見ている、つまりはキーを打っている本人の頭の中には正しい漢字が浮かんでおり、変換キーを押してしまえば、思考は直ちに次に進み、指がそれに続く。ところが、常に正しく漢字変換が行われるわけではもちろんなく、それゆえ頭のなかで浮かんでいる正しい漢字とは別の誤った漢字が画面に現れても、それに気づかない。こうして誤字が手書きより多く発生すると思われる。
 しかしこれだけでは誤字の多さを説明できない。自分の指が打ちだした文章を読み返せば、誤字に気づくことは可能だからだ。にもかかわらず、誤字が多いということは読み返すときにも問題が多いということになろう。おそらく、たとえ黙読であってもわれわれは「声」を感じながら、読み返している。それゆえ、たとえ誤字があっても、その誤字は「音」としては正しいために、読み返しているときには、つまりは「音」により注意が向いている段階では、「字」の誤りが気づかれにくいのではないだろうか。
 パソコンを用いて文章を書くときに誤字が多いのは日本語の特性による、そう思われるのである。

投稿者 Vapor Trail : October 6, 2003 10:59 PM