人が驚くのは今まで知らなかったことに対してである。これは自明だ。そしてこの驚きの感情(それは確かに感情だ)は、どうやら快を伴っているらしい。新しいものをひたすら追い求めることがあるのがその証拠だ。
しかしこれは精神を堕落させる、とデカルトは言う。精神が驚くべきものは他にある。新しいがささいな事柄に驚くのは、驚くべきものへの驚きを摩滅させてしまう、というのだ。
もしデカルトが今を生きていたならば、批判はより鋭さを増すであろう。新しいものを求めることによって動いているのが現代だから。しかし新しいと喧伝される事柄はそれほど新しくはないのではないか。類型的なものが多いのではないか。
デカルトの『情念論』を読み返す必要がありそうである。