October 04, 2003

ニーチェ

 須藤訓任『ニーチェ——〈永劫回帰〉という迷宮』(講談社選書メチエ、1999年)を読了。すでに何人かの人々から称賛されている本書をようやく読むことができた。評判に違わぬ、解釈の深さと論述の精妙さにおいて、勧められる一冊である。
 生の意味という問いに対する答えとして「永劫回帰」という迷宮(「耳」はその象徴である)を解釈する。永劫回帰は虚構であり、存在しないはずの、しかし言挙げすることによって在らしめられるかのような、外部である。その虚構に誠実に対処することは、厳粛でもあるがパロディーでもある。
 この奇妙な事態を笑い飛ばす精神の強さ、それをわれわれはニーチェに学ぶべきなのだろう。

投稿者 Vapor Trail : October 4, 2003 11:14 PM