July 08, 2004

世間虚仮

 佐藤正英『聖徳太子の仏法』(講談社現代新書、2004年)を読了。
 以下はこの書からの引用である。

世俗世界における現生は、かけがえのない時間・空間から成っている。しかし、世俗世界における現生は、現生だけで終結しているのではない。前生から現生へ、現生から後生へと繋がっている時間のなかに在り、いくつもの他界に接している空間のうちに在る世界である。現存は、基底において幽在時間・幽在空間に支えられている。現存の意味は、世俗世界における現生では時と処によってめまぐるしく変転して定まらない。世俗世界における現生で捉えられるかぎりでの事物や事象の在りようは、時と処によって変転するところの、虚にして仮なる在りようであって、真にして実なる在りようではない。世俗世界における現生は、事物や事象の実なる在りようを捉え、みずから体現することを希求して、思惟を重ね、修行を積む時間・空間である。他者との隔絶を埋めるべく、煩悩の汚泥にまみれ、辛苦する世界なのである。

投稿者 Vapor Trail : July 8, 2004 10:48 PM