March 30, 2004

誤作動?

 六本木ヒルズの自動回転扉に男の子が挟まれ死亡したという痛ましい事件に関する報道で違和感を覚えるものがある。「誤作動を少なくするために、センサーの死角を広くした」という表現の中にある「誤作動」という言葉である。
 コンピュータを使っている人は誰でも、操作ミスによってそれまで書いてきた文章を一瞬にして失う、という経験をしたことがあるだろう。コピー先とコピー元とを間違えるといったファイル操作ミスはより被害が大きい。こういったとき、過ちは人間にあるのであって、コンピュータにはない。コンピュータは使用者の命令に「忠実に」従ったまでであって、使用者の意図に反して文章を消すわけではないのだ。コンピュータには過ちはない。
 自動回転扉のセンサーも同じだろう。もしセンサーに「誤作動」が可能ならば、男の子はセンサーの死角に入っていたにもかかわらず、センサーが誤作動しために助かった、ということになるはずである。ではなぜ「誤作動」などという言葉が使われるのか。
 コンピュータの場合を考えれば明白である。保存するつもりだったのに、削除してしまった。コンピュータは馬鹿だ。これは意図とは別のことが生じてしまった、ということである。だからセンサーの「誤作動」とは、制作者や使用者の意図とは別に、あるいは逆に作動した、つまりは自動回転扉が止まった、ということを意味している。彼らの意図とは、できる限り多くの人間を効率的にビル内に入れたり、ビルから出したりする、ということである。
 センサーは「危険」を感知し、扉は止まった。だがその時、おそらくは健康な大人だったのであろう、センサーを作動させた人は挟まれずに済んだ。今回の事故(ないし事件)以前に、「誤作動した」と言われている事態はおそらくこうだった。
 センサーに誤りはない。過ちが使用者や制作者にあるのである。

投稿者 Vapor Trail : March 30, 2004 10:27 PM