March 29, 2004

新しいものと古いもの

 森有正「文化の根というものについて」より引用。

新しいものはすべて古いものの中から発芽し、それを包みきれなくなった古いものが脱落して行くという形で発展してゆく・・・そういう古いものが使用に耐えなくなるまで維持されて、新しいものを妨げるとともに深く養っている・・・
これはフランス文明について述べた言葉である。森のこの観察がただしいかどうかは分からない。しかし、「新しもの好き」が大手を振っている社会ではこういうことがなかなか見られないのは事実であろう。
 森の言うように、今現在あるものを利用し尽くすことからしか新しいものが生まれないとしたら、次から次へと新しいものを追いかけることからは何も生まれないということになる。アランの行動論、1、続けること、2、始めること、というのはこのことと通ずる。

cf. 二宮正之編『森有正エッセー集成4』ちくま学芸文庫、1999年、p. 179.

投稿者 Vapor Trail : March 29, 2004 10:53 PM