February 15, 2004

変貌

二カ月前に書いたものを見ると、もういつのまにかそれを超えてしまっている自分が意識される。それはどういうことなのか、説明するのはむつかしいし、恐らくそれは出来ないことであろう。しかしその変化と成長とは、一つの否定することの出来ない事実としてそこにあり、私は二カ月前に書いたものをすでに批判出来るようになっている自分を一つの重みを感ずるように感ずるのである。そして私は、一つのことが判り、理解することが出来るのは、決して知的面だけの問題ではなく、もっと経験全体の変容、その成熟に外ならず、それを確定するものとして知的判断が表れてくるのだということを知るのである。そしてそれ以外には、判るということは金輪際ありえない、と感ずるのである。私はそれを「変貌」と名付けたいと思う。
 二宮正之編『森有正エッセー集4』(ちくま学芸文庫、1999年)に所収の「変貌」からの引用(pp. 23-24)。
 言うまでもなく、このような変貌を遂げるには、不断の、連続した、精進の積み重ねが必要である。それが森の言う「時が成長している」事態である。 投稿者 Vapor Trail : February 15, 2004 11:16 PM