February 05, 2004

アランのプロポ「友情」

 「君の木を君の穴蔵のなかで腐らせてはいけない」とアランはこのプロポで語る。「穴蔵」とは閉ざした心であり、「木」とは喜びを内蔵している心である。火に木をくべると、太陽からいただいた、それまで内に隠していた熱が木から出てくるように、内に隠された喜びは笑うことによって外に現れ、本当の喜びとなる。幸福だから笑うのではなくて、笑うから幸福なのだ、とさえアランは言う。
 これはおそらくデカルトの考えによるものだろうが、より注目すべきはこのメカニズムが「友情」と題されているプロポのなかで語られていることである。もちろん、人が一人でいるのはよくない。「満足した人でも、もし一人でいれば、自分が満足していることをすぐに忘れてしまう」。だからこその友であろう。互いに内に隠し持っている喜びを外へと引き出すための。だが一人でいることを余儀なくされている場合もありうる。そのようなとき、笑うことを試みよとアランは言う。そうすれば喜びが湧いてくる。とすると、私の木の中の熱を引き出した火は私自身だということになる。私が私の友なのだ。
 友に対して友であることと、自分に対して友であること。そのどちらかがかけても真の喜びはないのだろう。

投稿者 Vapor Trail : February 5, 2004 11:27 PM