森有正「黄昏のノートルダム」より引用。
自然科学、自然の征服の思想の上に立つ近代機械文明、それを端的に表す近代戦、それは、自然への讃歎から出発したギリシア文明とたしかに異質のものだ。それは旧い文明を吸収消化することなく、それを破壊する。古い遺跡は、その文明の生命の持続を後に来る文明にゆずり渡し、自らは平和に自然に還るけれども、近代文明で破壊された旧い文化は、生命の持続を喪失し、死滅し、その不気味な死骸だけをのこす。
cf. 『森有正エッセー集3』(ちくま学芸文庫、1999年)、p. 268.
投稿者 Vapor Trail : January 21, 2004 09:53 PM