稲垣良典『恵みの時』を読了。著者はトマス・アクィナスを中心としたスコラ哲学の碩学。「単に観想するよりも観想のみのりを他者に伝えること contemplata aliis tradere の方がより大いなることである」というトマス『神学大全』(IIaIIae, q. 188, a. 6)の言葉に従って書かれたものである。「限りなき飢え」の中の
正義への飢えを、ただ正義の観点からのみ満たそうとすると、私たちは容易に怒りの感情にとりつかれ、ついには憎しみのとりこになってしまう。正義への飢えを、人間にふさわしい仕方で満たすためには、正義を含む全き善への飢えとしての会いに目を向けなければならないのである。
cf. 稲垣良典『恵みの時』(創文社、1988年)
投稿者 Vapor Trail : November 30, 2003 06:52 PM