September 16, 2003

繰り返し読むこと

 連休中にようやくといった感じで、『森有正エッセー集2』(ちくま学芸文庫、1999年)を読み終わる。
 いつものように考えさせられることがいろいろとあったのだが、特に印象に残っているのは「日記」のアランについて述べた言葉で、「アランはアリストテレスを18回も読んだ」という記述である。アリストテレスをこれだけ繰り返し読んだアランも偉いが、それに感動する森も偉い。この驚き(感動とは驚きだ)は、書を読まない者が抱いたものではなくて、読書家が抱いたものだ。プロがプロに驚く。この驚きは貴い。これに対して素人が持つ驚きも当然ある。それは素朴でほほ笑ましい。しかし尺度にはならない。
 残念ながら、素人が玄人に対して持つ驚きをテレビなどでは盛んに流す。だから次から次へと驚きの対象が求められる。新しいものがもてはやされるのはそのためだ。そのような態度とアリストテレスを18回も読む態度とは何とかけ離れていることだろう。

投稿者 Vapor Trail : September 16, 2003 09:50 PM