September 11, 2003

憎しみ

 恐れるべきものは怒りではなくて憎しみである。怒りは突発的であるが、憎しみは持続するから。なぜ憎しみは持続するのか。おそらくは憎しみの方がより言語化可能だからではないか。怒りは個別的であるが、憎しみは普遍的である。個別的な怒りにでさえ、正当かどうかはともかく、理由がある。ならば憎しみはより理由をもって語られるであろう、それが正当であるかどうかはともかくとして。とすると、人間以外の動物には怒りはありえても憎しみはないということになるのだろうか。
 憎まれた場合、人はどのように反応するのか。まず、おびえ、恐れる。そしてその恐怖は怒りに変わり、さらに憎しみに変わるであろう。こうして生じた憎しみの連鎖を断ち切ることは極めて困難である。当事者双方に理由があるからである。
 人間は人間のみが持つ情念によって自らを滅ぼしてしまうのか。そうではないことを自らに証しすること、これがおそらくは今世紀の課題なのだ。

投稿者 Vapor Trail : September 11, 2003 10:00 PM