January 19, 2005

読み返す

 書かれた文字は固定している。こちらの問いかけに答えてくれない。これがプラトンの不満だった。だが、プラトンほどの精神ならともかく、私のようなものには何度か読み返すことによっていろいろと発見がある。読んでも気付かないことがある。気付いても忘れてしまうことも多い。こちらの読み方が変わることだってある。だから読み返すことによって「新しくなる」のだろう。
 『夏目漱石全集2』(ちくま文庫、1987年)をおもしろく読んだ。収録作品のほとんどは別の本で読んだことがあるのに、やはりほとんど忘れていた。とはいえ読み方が変わったのかもしれない、と読みながら感じた時もあった。どのように? 文学学者のように読んだわけでもない。作家のように読んだわけでもない。どうもうまく言えないのだが、夢中になっていながら、しかしどこかしら突き放して読んでいたようだ。「体験」が増したから突き放して読めるようになったのだろうか。それならば馬齢を重ねたというだけのことなのだが。

投稿者 Vapor Trail : January 19, 2005 10:39 PM